
ご近所から始まったご縁が、ひとつの家に。
―「環りの邸宅」お引き渡しに寄せて ―
私が5年前に引っ越してきたとき、ご近所になったお客様の家を、自分が手がけることになるとは思ってもいませんでした。
始まりは、ご近所としてのお付き合い。日々顔を合わせ、お話しする中で、家づくりについても相談をいただき、私なりのアドバイスをお伝えするようになりました。建築の仕事をしている私と、これからの住まいを考えているお客様。身近な暮らしのすぐそばに、この家づくりの話のはじまりがありました。
そして、今から2年前。
「家づくりをお願いしたい」と声をかけていただきました。
身近な存在だからこそ、知っていただいていることもある。そのうえで、ご家族の大切な家づくりを私たちに託してくださった。その信頼がうれしく、同時に、しっかり応えたいと思いました。
家を建てる場所は、もともとご親族が畑をされていた土地です。
ご親族の方が耕し、大切にしてきた場所に、今度はご家族の暮らしが始まる。そう考えると、この家づくりは、建物をつくることとともに、土地に重ねられてきた時間を受け継ぐことでもあるように感じます。
そして、この住まいには、さまざまな方が関わっています。お客様ご家族、ご親族、家づくりを支えてくださった方々。一つひとつのご縁がつながり、ようやく今日の姿になりました。
この家を、私たちは「環りの邸宅」と名付けました。
中心にあるのは、中庭です。そこから自然のエネルギーを取り込み、LDKへと広げていく。家の中にいながら、365日、自然を感じて暮らせる住まいを目指しました。
朝と夕方で変わる光。季節によって違う庭の表情。晴れた日にも、雨の日にも、その日ならではの自然が暮らしのそばにある。毎日を過ごす場所だからこそ、そんな小さな変化を感じられることを大切にしています。
外観には、建物を取り巻くように帯状に連なるファサードをつくりました。中庭から暮らしへと広がる自然と、住まいを包み込む建築のかたち。その両方に「環り」という言葉を重ねています。
その引き込まれるような感覚を最大化しているのは、天井の形状と大工さんが頑張ってこしらえたスノコ状の天井かと思います。迫力と丁寧な仕事はいつも人の心を動かします。
今後は人の心を動かし続ける建築がよりフォーカスされる。実の世界に転換していくと思います。
完成を迎えた今、この名前には、もう一つの意味があると感じています。
それは、人とのご縁です。
私がこの場所へ引っ越してきたことで、お客様と出会い、その出会いが家づくりにつながりました。そして、この家づくりを通して、私たちもまた、多くの方との新たなご縁をいただきました。
お客様の住まいをつくる中で、私たち自身も、これからのアーキデイトデザインを考えるきっかけをいただきました。
この家は、私たちがさらに一歩進むための、大切な節目になる。そんな予感がしています。いただいたご縁や経験を、これからの仕事にどう生かしていくか。その答えを、一つひとつの家づくりで形にしていきたいと思います。
お客様、この度はお家の完成、本当におめでとうございます。そして、大切な家づくりを私たちに任せていただき、ありがとうございました。
ご親族が畑を育てていたこの土地で、これからはご家族の日々が育っていきます。中庭の自然を感じながら過ごす何気ない時間が、かけがえのない思い出になっていくことを願っています。
5年前、ご近所になったところから始まったお付き合いは、お引き渡しのあとも続いていきます。
これからは、家をつくった建築会社の代表として、そして変わらずご近所の一人として。この住まいと、お客様ご家族の暮らしを見守っていけることを、スタッフの皆と共に楽しみにしています。